スーツの上着、またはジャケットにはポケットがいくつあるかご存じでしょうか。
仕立て方法やメーカーによって異なりますが、一般的には5つでしょう。つまり左右の腰ポケット、左右の内ポケット、そして左の胸ポケット。では、このポケットの使い途はご存知でしょうか。
服飾の歴史や由来を紐解けば、諸説あるようですが、現代において、また美しくスーツやジャケットを着こなす上では、何も入れないのが基本です。
しかし胸ポケットは目につきやすい場所なので、ここをウマく使うと印象が変わります。ポケットチーフがその一例ですが、ただ挿せばいいということではありません。ファッションにはルールがあります。ポケットチーフの使い方も例外ではありません。まずは基本を理解しましょう。その上で、自分なりの“あそび”を加えると、一気におしゃれ度が増すはずです。
TPOを踏まえた素材選び
ポケットチーフというと華やかな印象があるので、シルク素材を想像しがちです。しかしTPOを考えると、光沢があるシルクでは相応しくないケースがあることは理解できます。
ポケットチーフの基本的な素地はリネン=麻です。色はもちろん“白”。
たたみ方は後述しますが、折り目がキレイに出るのが“麻”の特徴です。白いチーフをきりっと挿すと、清潔で清々しい印象が生まれます。
想像できると思います。
出来れば上質なものを選びましょう。白のほかに淡い色(ブルー系)のパイピングされた2枚を持っておけば、スーツの色に合わせて使いまわしできます。
ただしリネン素材を使えるのは“昼”=陽の高い時間に限られるので、それ以降は光沢のあるシルクが許されます。
自ずとたたみ方にも変化が生まれ、素材の柔らかさ、華やかさを生かしたものになります。ビジネスシーンを含む明るい時間帯は“リネン”、陽が傾いてきたら“シルク”と覚えておけばいいでしょう。
TPOを踏まえたたたみ方(刺し方)
さまざまな方法がありますが、4つの方法について解説します。
ご理解いただきたいのは、素材と相性のいいたたみ方があるということです。
【TVフォールド】
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アメリカのニュースキャスターが使っていた方法と言われていて、その名残からTV・・・と言われるようになったとか。スクエアフォールドとも言われています。“チラ見せ”というさじ加減、華美にならずに清潔感もあることからビジネスシーンやデイタイムの場に向いています。
たたみ方は、ポケットから1㎝程度覗くように四角く成形します。
チーフの縁側が見えるように差し込みます。
ズレがないようにキレイにたたむのが基本ですが、少しズラしてたたむというアレンジもアリです。
リネン素材が基本ですが、最近では高番手のコットンで代用することもあるようです。
【スリーピークス】
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三角に追った三つの頂点が上を向くようにたたみます。
ピンと張っているほどキレイに収まります。腰の弱い、柔らかな素材、シルクなどを使うと成形しづらいので、リネンなどを使いましょう。
華やかでフォーマルな場に相応しいタイプです。礼服、例えばモーニングを着る時間帯に用いるといいでしょう。カジュアルなジャケトスタイルにはあまりお勧めできません。
【パフ】
チーフ中央部分をつまみ、素材の柔らかさで表情を作るたたみ方です。
つまんだ側が見えるように差し込みます。その分量が微妙で、全体のバランスをみながら主張すぎないように。
“素材の柔らかさ”という点がポイントです。
シルク素材を用いることで可能になります。華やかさがありシルク素材ということから、ビジネスやデイタイムには不向きです。
パーティなどの宴席に向いています。またディナーやデートの時、TVフォールドから差し替えるとういうテクニックもアリでしょう。
無地でも柄モノでもイイのですが、覗く分量はほどほどに。
【クラッシュ】
パフスタイルの発展形と言えます。つまみ方は同じですが、差し込む向きが反対です。チーフの縁が見えるように、花を挿したように整えます。剣先が立つのでスリ―ピークスのように映りますが、シルク素材を用いるのでコナレ感が生まれます。
華やかで“遊び”の要素が多いのでパフスタイル同様にパーティや宴席向きです。ビジネスシーンではNGです。
失笑されるか、マナーに厳しい方から
“パーティ会場からお出でですか”など皮肉を言われるかも知れません。色使いが難しいスタイルです。着衣の色とコントラストが
強いとウイて見えます。同色に近い無地または柄ものを選ぶといいでしょう。
ポケットチーフとネクタイのバランスについて
ポケットチーフの基本は上記の通りですが、ネクタイとの関係についても触れておきます。
チーフを使うのであれば、カジュアルな意匠のネクタイ、例えばレジメンタルタイとは避けた方が無難です。同じ意味でボタンダウンシャツとのコーデも。
正式な装いを演出する小物なので、ジャケットよりはスーツ、シャツは無地のレギュラーカラー、ネクタイは小紋柄などスーツに相応しいものを選ぶようにします。
真逆のコーディネイトとしては、ネクタイをせず派手目のチーフをパフやクラッシュスタイルで差し込む方法です。
シーンは限られますが、チーフの華やかさを一層アピールできます。シックにいくか、華やかに攻めるか。チーフのさじ加減が試されます。
まとめ さり気なく洒落るには
冒頭に書いたように胸ポケットは目につく位置にあるので、チーフを挿すと否が応でも目立ちます。しかしうまくまとまれば印象が変わります。(特に女性からの評価)なかなか難敵です。
TVフォールドから始めましょう。白のリネンを手に入れ、次は淡いブルーやピンクも清潔感があります。
この手順がさり気なく出来るようになったら、TPOを考えてドット柄のシルク素材などにチャレンジしてみましょう。
少々時間はかかりますが、気付いてくれる人が現れます。
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